朝日新聞にkesaneを掲載いただきました。

2022年10月7日

ジョージアの水色ワイン、「ケサネ」

ジョージア8000年の歴史が生んだ
忘れな草色ワイン
ロシア依存からの脱却で飛躍

鮮やかな水色をしたワインが注目されている。ワイン発祥の地として知られるジョージア産で、在日ジョージア大使がツイッターで紹介して話題になった。異色ワインの誕生は、ジョージアのワイン業界が「ロシア依存」から脱却した象徴とも言えそうだ。
 「8000年の歴史を持つ、最古のワインの国だからこそ生み出せた色だと思っています」
 在日ジョージア大使のティムラズ・レジャバはそう胸を張った。手には水色のワイン「ケサネ」のボトルが握られていた。
 ケサネとはジョージア語で「忘れな草」の意味。水色のかれんな花を咲かせるこの植物から命名したのはぴったりだ。透明感のある水色からは、それがワインだとはとても想像できない。
 ネットで注文して実際に飲んでみると、ジョージアワインの特徴とも言える甘さが、スーッと口に広がり、それでいて最後はキュッと苦みで締まるような感じ。ハチミツやリンゴ、桃のような果物の甘い香りもする。
 それにしてもこの鮮やかな水色はどのように着色しているのだろうか。生産業者のジョージ・グレイワイナリー(ジョージア・ムツヘタ)によると、当初は黒ブドウの花から抽出される色素を使っていたが、現在は皮から抽出した色素を使っており、いずれにしても天然の色素なのだという。
 ジョージ・グレイワイナリーの担当者はこう話す。
 「この独特なワインを作るために新製法も編み出した。商品化にいたる過程では多くの困難と挑戦があったが、地元内外のワイン製造の専門家たちと何度も話し合った」
 ジョージアでは、ワインを醸造するのにクベブリという素焼きの瓶を使う独自の製法が採られてきた。だが、ケサネは欧州でよく使われているステンレス製のタンクを使用。担当者は「ヨーロッパの技術と、ジョージアの8000年の伝統技法を融合した一つの理想形」と自信を見せる。
 ジョージアのワインは、この国がまだソ連を構成していた時代から人気で、ソ連崩壊後もロシアが販売先のほとんどを占めた。
 ところが2006年、ロシアが突然、禁輸に踏み切った。理由は「衛生基準の不備」とされたが、この年、ジョージアで誕生したサアカシュビリ政権が反ロシア・親欧米路線を鮮明にしたため、これに対する圧力との見方が有力だった。
 ジョージアのワインメーカーの多くが廃業や経営危機に見舞われたが、逆境を逆手にとって輸出先の多角化を進めた。旧ソ連時代の設備をイタリア製の最新機材に替え、国際見本市にも出品するなどした。
 その結果、旧ソ連を構成していたロシア以外の国々で売り上げを伸ばし、さらには東南アジアなどにも販路は広がった。
 一方、ジョージアとロシアの関係はさらに悪化し、08年、ジョージアにある親ロシアの地域「南オセチア」をめぐって両国が軍事衝突した。
 ロシアによる禁輸は13年になってようやく解除されたが、ジョージアのワイン業界はすでにロシア市場に頼らないだけの国際競争力を身につけていた。
 ケサネも、日本だけでなく、発売1年で、スイス、オーストリア、ドイツ、リヒテンシュタイン、アメリカといった国々で取引が始まっており、販売量の7割を輸出が占める。保守的なジョージアの人たちからも受け入れられており、担当者は「ジョージアンワインで最も人気があると胸を張れる」と話す。

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